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院長通信

2012年7月

副鼻腔炎

 皆さんは副鼻腔炎(ふくびくうえん)という病名を耳にされた事がありますか?
一般には蓄膿症(ちくのうしょう)の方が良く知られているかもしれませんが、この二つは同じ疾患をさす言葉です。
この副鼻腔炎はいわゆる「青鼻」または「黄鼻」と呼ばれる色のついた鼻汁が鼻の穴から出てくるのが大きな特徴です。最近でこそアレルギー性鼻炎に主役を譲っていますが、昭和40年ごろまでは最も頻度の高い耳鼻科の病気でした。しかし現在でもよく見られる病気で、当院にもたくさんの副鼻腔炎患者様が受診されています。

 この病名を告げるとしばしば「蓄膿症は治らないと聞いたのですが治りますか?」とか「なぜ蓄膿症になったのですか?」という質問を受けます。
そこで今回は副鼻腔炎(蓄膿症)について説明したいと思います。

 人間の頭部を作っている骨の中には副鼻腔(ふくびくう)と呼ばれる鼻とつながったいくつかの空洞があります。なぜこのような空洞があるのかについてはいろいろな説がありますが決定的な理由は判りません。この空洞内の粘膜に細菌感染が起こるとそれによって膿性分泌物(のうせいぶんぴつぶつ)が産生され、副鼻腔の中にたまってゆきます。

 この状態が副鼻腔炎で、鼻とつながった連絡口から膿性分泌物が鼻内に排出されていわゆる「青鼻」、「黄鼻」とよばれる色のついた鼻汁になるのです。副鼻腔炎はX線写真で副鼻腔内の粘膜肥厚や膿性分泌物の貯留を確認するか、内視鏡で副鼻腔から鼻腔に膿性分泌物が排出されている事を確認するかで診断することが出来ます。

 この膿性分泌物は後方ののどに向かって流れる事が多く、これを後鼻漏(こうびろう)と呼びます。鼻の穴から鼻汁が出ていないのに副鼻腔炎と診断される事がありますが、副鼻腔炎では後鼻漏の方がより多く見られるのです。 痰や咳を訴えて来院される患者様の約半数は副鼻腔炎による後鼻漏が痰や咳の原因となっており、のどの病気の原因が鼻にあるといった事もよくあることなのです。

 鼻汁以外の症状としては鼻づまり、匂いがわからない等があります。重症の副鼻腔炎では粘膜がふくれ上がって鼻茸(はなたけ)と呼ばれる組織を作り、これが空気の通り道をふさいで鼻づまりを引き起こします。また鼻茸により空気が鼻の奥まで到達できなくなると匂いを感ずる事が難しくなります。

 副鼻腔炎を防ぐためにはバランスのとれた食事が必要です。第二次世界大戦までは最も頻度が高かった副鼻腔炎が戦後激減したのは栄養状態が良くなったからだと考えられています。
またこまめに鼻をかませる、汚い手指で鼻を触らないなどの衛生に対する気配りも副鼻腔炎になりにくくするためには重要です。

 副鼻腔炎の中には確かに治りにくく長期にわたって治療を続けられる患者様もたくさんおられます。しかし適切な治療を受けた患者様の副鼻腔炎の大多数は治癒している事も事実なのです。治療のポイントはやはり早期発見早期治療です。先ほど述べました様な症状が現れましたらなるべく早く耳鼻咽喉科の専門医をお訪ねください。