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院長通信

2012年12月

咽喉頭神経症

 患者様が悩んでおられるのにそれを客観的、具体的にとらえられない耳鼻咽喉科領域の病気の一つに「咽喉頭神経症」という病気があります。
これは「のどに何か出来物がある感じがする」、「飲み込んだ時に引っかかる感じがする」「いつものどに痰が絡んでいる」などの訴え(このような訴えは咽頭違和感と呼ばれます)で診察を受けられる患者様のなかでこれらの症状を引き起こす明らかな原因が判らない場合や、原因が判明しそれに対する治療を行ったにもかかわらずこれらの症状が持続する場合につけられる病名です。

 耳鼻咽喉科を受診される患者様の約10%は程度の差はありますが、咽頭違和感を訴えられます。咽頭違和感を訴えられた患者様の多くはこの咽頭違和感の原因を探し出し、適切な治療を行う事によって症状を改善させることが出来ます。
咽頭違和感の原因となる代表的な病気としては次のような物があげられます。

1.のどの腫瘍性病変
私どもが最も注意する病気は悪性腫瘍(いわゆるガン)です。患者様の関心も高く、なかには「私はガンです」と自分で診断して受診される方もあります。しかしのどの悪性腫瘍はそれほど頻度の高い病気ではなく、私どもの診療所では年に数人見つかる程度です。また良性の腫瘍も同じ位見つかります。

2.のどの炎症、形態異常
咽頭違和感を引き起こす病気の中で最も良く見られるのがのどの病気です。慢性の咽喉頭炎や扁桃炎などの炎症性疾患、喉頭の変形や舌扁桃肥大などの形態異常があります。炎症に対しては薬やうがいで対処しますがなかなか症状が改善しない方も見受けられます。形態異常に対しては根治するためには手術が必要になる場合もあります。

3.鼻の病気
のどの病気が原因となるのは理解されやすいと思いますが、なぜ鼻の病気で咽頭違和感が起こるのかと疑問を持たれる方もおられると思います。副鼻腔炎(ちくのう症)による後鼻漏(黄鼻がのどに流れる症状)、アレルギー性鼻炎や鼻中隔湾曲症が原因で生じた鼻閉(はなづまり)による口呼吸が症状を引き起こすことがしばしば見受けられます。鼻の治療で咽頭異常感が消失する事も多いのです。

4.胃、食道の病気
強い酸性の胃液が食道内に漏れてくると逆流性食道炎という病気がおこります。胃酸分泌を抑える薬が有効であればこの病気と考えられます。

5.更年期障害
中高年女性の咽頭違和感の原因として最も多い病気で、めまい、のぼせ、動悸などの症状と一緒に出現する事もしばしば見受けられます。婦人科で行われるホルモン療法が有効です。

 咽喉頭神経症はなかなか症状が取れにくい病気で複数の病院を受診される患者様も少なくありません。病気を正しく理解して冷静に対応することが望まれます。