兵庫県西宮市甲子園口 耳鼻咽喉科 レーザー手術 甲状腺腫瘍 花粉症 アレルギー

院長通信

2013年4月

嗄声(させい)の話

 皆さんは嗄声(させい)という言葉をお聞きになった事がありますか?これは一般的に「かすれた声」や「しわがれ声」と表現されている声の異常を表わす医学用語です。
 私たちの首には喉頭と呼ばれる器官があります。この喉頭は口や鼻から吸い込まれた空気を肺に導き、食物や水分は食道から胃に送るという重要な役目を果たしている器官です。またこの喉頭は、喉頭内にある左右の声帯を肺から吐き出される空気で振動させて声を作り出す役目も持っています。この声帯に異常が生ずると声に変調をきたし、嗄声と呼ばれる状態となるのです。

 嗄声を引き起こす各種の病気の中で最も頻度の高いのが喉頭炎などの炎症性の病気です。風邪をひいて声が変わった経験をお持ちの方は多いと思います。炎症による嗄声は局所に対する消炎療法が有効で、比較的短期間に改善するのが特徴です。

 声帯が浮腫をおこして腫れる病気が声帯ポリープです。原因は不明で、なかなか治りにくい病気です。外科的な治療が必要となる場合もしばしばです。また声帯に硬いシコリができる声帯結節という病気があります。これは声帯の一部が硬く変形する病気で元気な男の子に良く見られ、学童期結節と呼ばれる事もあります。声帯ポリープも声帯結節も無理をして大声を出し続けることが原因と考えられています。タバコも悪影響を及ぼします。

 嗄声をきたす病気で最も注意しなければならないのが喉頭癌です。喉頭癌は悪性腫瘍の中でも生命予後の良い病気ですが、これは病気の初期に嗄声が生ずるため他の悪性腫瘍に比べて早く癌を発見できるためです。早期の喉頭癌は手術で声を犠牲にすることなく治癒させる事が出来ます。

 左右ある声帯のどちらか一方が動きにくくなった時も嗄声が生じます。これが反回神経麻痺と呼ばれる病気です。ウイルス性の風邪などで一過性に生じ、自然に治ってしまうものも多いのですが、肺癌、甲状腺癌、大動脈瘤など放置すると命にかかわる病気が隠れている場合もありますので慎重に原因を調べる必要があります。

 このように嗄声には重大な病気が隠れている場合もありますので声に異常を感じられたら出来るだけ早く専門医の診察を受けることをお勧めします。特にタバコを吸われる方は悪性腫瘍になる確率が高くなりますので注意が必要です。