兵庫県西宮市甲子園口 耳鼻咽喉科 レーザー手術 甲状腺腫瘍 花粉症 アレルギー

院長通信

2013年6月

耳閉感(じへいかん)

 皆さんは耳閉感(耳閉塞感)という言葉を聞かれた事があるでしょうか。これは皆さんが高い山を上り下りした時、高層ビルのエレベーターを利用した時、飛行機の離着陸の時などにしばしば感じる耳がふさがったような、耳が外から押しつけられるような感じを表わす言葉です。

 私たちの耳の中には鼓膜(こまく)という薄い膜があり、私たちはこの膜で空気の振動を感じ取っています。この鼓膜の外側は外界と同じ気圧にさらされているのですが、鼓膜の内側は中耳腔(ちゅうじくう)と呼ばれる半閉鎖腔になっており、この中耳腔内の圧が外気圧と異なった場合、鼓膜が圧の低い方に押し込まれ耳閉感を生ずると考えられています。
中耳腔が半閉鎖腔という訳はこの中耳腔が耳管というふだんは閉じている細い管で外界とつながっているからです。そしてこの耳管が開くと中耳腔内の圧が外気圧と等しくなるのです。
先ほど述べたケースのように急激に鼓膜の内外の気圧に差が出来た場合、私たちは強い耳閉感を感じ、これを解消するために唾を飲んだりあくびをしたりして耳管を開通させようとします(耳抜きと呼ばれます)。これらの耳抜き行為で症状が改善できればよいのですが、鼻やのどに病気がある場合は耳管が閉じたままの状態が持続し、結果的に耳管狭窄症や滲出性中耳炎と呼ばれる病気となってしまいます。

 耳管狭窄症や滲出性中耳炎を放置すると、やがて癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎という手術的治療が必要な病気が続発してきます。

 またこの耳閉感をきたす病気で忘れてはならない病気に突発性難聴があります。この病気はある日突然に片耳の聴こえが悪くなる病気ですが、この聴こえの悪さを耳閉感(耳がつまった感じ)と感じられる方が多くおられるのです。突発性難聴は耳鼻咽喉科領域では最も緊急の治療を要する病気の一つで、症状が起こってから治療を開始するまでの時間が短ければ短いほど良好な治療成績を得る事が出来る病気なのですが、耳閉感を感じられた方のなかにはこの耳閉感を耳管狭窄症によるものと誤認して「そのうちに治るだろう」と放置し治療を開始する機会を逃してしまう方がおられるのです。

 耳閉感は私たちがあまりにしばしば体験する感覚なので軽く考えがちですが、裏に重大な病気が潜んでいる場合もありますので、耳がふさがったかなと思ったら至急専門医の診察を受けることをお勧めいたします。