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院長通信

2014年8月

嗅覚障害

 匂いを感じる感覚のことを嗅覚と呼びます。野生動物にとって匂いを感じることは身のまわりの危険に気づくために必要で、生きてゆくために非常に重要な感覚です。野生動物ほど匂いに頼っていない人類の嗅覚は野生動物に比べると鈍いと言えますが、腐ったものの匂いや体に有害な匂いに気付く事は体を守るために大切な機能です。
匂いは鼻の奥にある嗅裂と呼ばれる部位にある嗅細胞で感知されます。空気に含まれているにおい分子が嗅細胞の線毛に触れると電気信号が発生し、その信号が嗅球と呼ばれる頭蓋底にある第一次中枢から嗅神経を通じて脳へと送られ、においが認識されるのです。この経路に問題が起こると匂いが十分に感知できなくなりますが、これを医学的には「嗅覚障害」と呼びます。

 「嗅覚障害」はその原因によりいくつかのパターンに分類されます。
まず鼻の中に鼻茸などの障害物があり嗅細胞に匂い分子が到達できない呼吸性嗅覚障害
有毒ガスの吸入や加齢変化などにより嗅粘膜の機能が低下する嗅粘膜性嗅覚障害
頭部外傷や脳腫瘍などで嗅球や高次中枢が障害される中枢神経性嗅覚障害などです。
また「嗅覚障害」には嗅覚が低下する障害以外に匂いを異常に敏感に感じる嗅覚過敏、違ったものの匂いに感じる異常嗅覚などが含まれます。

 匂いが鈍いとの訴えで来院される患者様の大多数は呼吸性嗅覚障害か嗅粘膜性嗅覚障害です。そして大部分の患者様が慢性副鼻腔炎を合併されています。しかし希に頭蓋内の疾患やウイルス性の感染症が原因になっている場合もありますので注意が必要です。呼吸性の嗅覚障害に対しては慢性副鼻腔炎など鼻の気流を乱す原因疾患を取り除く治療を行い、嗅粘膜性の嗅覚障害に対してはステロイドホルモン剤の点鼻治療を行います。
適切な治療を行えば嗅覚が回復する例も多く見られます。嗅覚障害は症状が出現してから治療を開始するまでの期間が短いほど治癒する可能性が高いので匂いが鈍いと感じられた方は早期に治療を開始されることをお勧めします。