兵庫県西宮市甲子園口 耳鼻咽喉科 レーザー手術 甲状腺腫瘍 花粉症 アレルギー

院長通信

2017年9月

急性中耳炎と鼓膜切開術

 中耳炎につきましてはこれまで度々この院長通信で取り上げおり、本年5月にも「子供の中耳炎」を取り上げてこの病気についての説明を述べさせていただきました。
今年の夏はなぜか急性中耳炎にかかられる子供さんが多く、その治療手段として鼓膜を切開して中耳腔に溜まった膿汁を排出する鼓膜切開術を何度も行いました。 中には一ヶ月のうちに急性中耳炎を何回も繰り返し、二度三度と鼓膜切開術を受けた子供さんもおられました。
当院では鼓膜切開術が必要と判断される場合は必ず鼓膜の所見を供覧し、ご家族の理解を得たうえで切開排膿を行っておりますが、「何度も鼓膜を切開して大丈夫ですか?」という質問がしばしば寄せられました。
そこで今回は急性中耳炎と鼓膜切開術に絞って院長の考え方を述べさせていただきます。

 子供が急に耳が痛いと訴えた場合はもちろん急に高熱を出した場合でも急性中耳炎である可能性はかなり高率です。 急性中耳炎の痛みは中耳腔に溜まった膿が鼓膜を圧迫することによって生じますので炎症が高度で痛みが続く場合には鼓膜を切開して中耳腔にたまっている膿を出すことが苦痛を和らげる早道になります。 しかし抗生物質が発達し、薬による治癒率が飛躍的に高まった今日、鼓膜切開術を否定する耳鼻咽喉科医がいることも事実です。 院長も軽症の急性中耳炎には抗生剤の投与による薬物療法が第一選択であると考え保存的治療を行っておりますが、強い痛みや高熱を伴う重症の急性中耳炎に対しては積極的に鼓膜切開術を行うようにしております。 それはこのような重症例を抗生剤投与のみで治療すると治療期間が遷延し滲出性中耳炎に移行する可能性が高いからです。 急性中耳炎に繰り返してかかるのはほとんどが1〜2歳の子供さんです。これはこの年齢の子供たちの耳管機能が未熟で鼻やのどの炎症が中耳腔に波及しやすいためです。この時期に鼓膜切開術を頻回に受けた子供たちでも3〜4歳になるとほとんど急性中耳炎にかからなくなります。このような子供たちの鼓膜を見ても頻回に受けた鼓膜切開術の後を見つけるのは極めて困難です。

 子供さんが重症の急性中耳炎にかかってしまった場合は鼓膜切開術という早期に患児の苦痛を取り除く治療法を選択していただきますようお願いいたします。