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院長通信

2010年11月

多剤耐性菌感染症

 今回は最近新聞やテレビでよく目にする多剤耐性菌感染症についての当院の取り組みを述べたいと思います。

 多剤耐性菌とは複数の抗生剤に耐性を獲得した細菌の呼び名です。
判りやすく言えばこれらの細菌による感染症が起こった場合治療する方法が非常に限られ、治す事が難しい厄介な細菌という事です。
現在確認されている多剤耐性菌はたくさんありますが、代表的なものにメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性緑膿菌(MDRPA)などがあります。 これらの細菌は普段私たちの周囲にある菌で、誰でも保菌者(感染者)になる可能性があるのですが、幼児や高齢者などで体の抵抗力が弱った人がこれらの細菌による発熱や化膿等の症状(感染症)を発症すると生命にもかかわる厄介な病気となるのです。

 私どもの医院でも多い月には数人の患者様の耳漏、鼻漏、のど等から多剤耐性菌が検出されます。 元気な患者様に生じた多剤耐性菌感染症ですから数週間根気よく治療すればたいていは多剤耐性菌が消失してしまいます。
この場合気をつけなければいけない事は多剤耐性菌を他の人に移さないようにする事です(病院の中で人から人へ多剤耐性菌が感染する事を院内感染と呼びます)。 インフルエンザに罹った際、他人に移さないように人との接触を避けるのと同様の対応が多剤耐性菌感染症に罹った場合も求められます。

 当院では患者様のご理解のもと多剤耐性菌感染症と判った患者様は午前午後の診察時間の最後に予約を取らせていただき出来るだけ他の患者様と接触しないように治療させていただいております。
また病院入口への手指消毒用薬剤の設置、医療機器や院内設備の消毒等で院内感染を防ぐため最大限の注意を払っております。
多剤耐性菌が検出された患者様にはご不便をおかけしますが御理解を賜りたいと存じます。

 この多剤耐性菌の出現の原因として良く指摘されるのは抗生剤の乱用です。 安易な抗生剤の服用は多剤耐性菌出現となって返ってまいりますが、家畜の生産現場や魚の養殖現場で多量の抗生剤が使用されている現状では知らないうちに食品から抗生剤を摂取している事もあるのです。
当院では白血球数、白血球分画、CRP値を迅速検査で調べ、細菌感染が認められない場合原則として抗生剤無しで治療するように心がけております。

 多剤耐性菌は私達の周囲のどこにでも存在します。 外出から帰った後の手洗い、うがいの励行は多剤耐性菌のみならず種々の病原菌から私たちを守る有効な手段です。