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院長通信

2011年2月

咳のお話

 耳鼻咽喉科を受診される患者様は種々の訴え(症状)を持っておられます。 その一つに「咳が止まらない」という訴えがあります。 今回は「咳」について考えてみたいと思います。

 私たちは鼻から空気を吸い込み肺に送り、肺で空気中の酸素を血液に取り込んで生命を維持しています。 この鼻から肺までの空気の道を気道と呼びます。 この気道は、鼻から鼻腔、鼻咽腔、咽頭、喉頭までの上気道と喉頭よりも肺側の気管から気管支、細気管支、肺までの下気道とに分けられます。

 咳は気道が刺激される事によって生じた求心性インパルスが延髄にある咳中枢に達し、 そこから発せられた遠心性インパルスが呼気に関係する筋肉を急激に収縮させる事によって生ずる一種の反射運動です。 一般的に「咳止め」として使用される薬は咳中枢の求心性インパルスに対する反応を低下させてこの反射運動を抑制する事により咳が出にくくする作用を持っています。 咳は元来呼吸を行う気道を守る体の防御反応で、 咳が出なければ気道に進入した異物を排出する事が出来ず生命を維持する事が出来ません。 無理に咳を抑えてしまう事が体に不利益になる事もあるのです。 従って咳の治療に当たってはその原因を考えた上で適切な治療を行う必要があります。

 では咳を引き起こす病気の代表的なものを上げてみましょう。
上気道の病気で咳を引き起こすものには副鼻腔炎、咽頭炎、扁桃炎、喉頭炎、いわゆる風邪症候群(急性上気道炎)等があげられます。
下気道の病気には気管支炎、肺炎、喘息、肺結核、肺がん、慢性閉塞性肺疾患等があります。

 耳鼻咽喉科を標榜する当院では主に上気道の病気を治療させていただいております。
鼻閉、膿性鼻漏を主訴とする副鼻腔炎はしばしば咳を伴いますが、副鼻腔炎の患者様に安易に咳止めを処方しますと 膿性鼻漏が下気道に進入し副鼻腔気管支症候群と呼ばれる厄介な病気になってしまう事があります。 副鼻腔炎の患者様は原因疾患の治療を優先し根気よく咳の原因を取り除いて行く事が必要です。
咽頭炎、扁桃炎、喉頭炎等で細菌感染が原因と診断された場合は抗生剤又は抗菌剤に去痰剤、 咳止め薬を加えて咳に対する治療を積極的に行います。
子供さんが夜間に痙攣性の咳を繰り返す場合は急性声門下喉頭炎という呼吸困難を引き起こす恐ろしい病気の場合もあります。内視鏡で急性声門下喉頭炎と診断された場合はより強力な治療を行う必要があります。
主にウイルスによって引き起こされるいわゆる風邪症候群と診断された場合は感冒薬等必要最小限の薬に留め体の持つ自然の治癒力を利用します。
当院では迅速血液検査、内視鏡検査等を行って疾患の原因を素早く特定し必要最小限の薬で治療するよう努力しております。

 一方下気道の病気が疑われた場合は適切な専門医を紹介させていただき治療を受けていただいております。

このように一口に咳と言ってもその原因となる疾患により様々な対処法があります。 咳でお悩みの方は一度専門医の診察を受けられる事をお勧めいたします。