兵庫県西宮市甲子園口 耳鼻咽喉科 レーザー手術 甲状腺腫瘍 花粉症 アレルギー

院長通信

2011年3月

幼小児の鼻水

 3月の声を聞きやっと寒さも和らいできましたが、これからはやっかいなスギ花粉が飛散する季節です。 花粉症で毎年お悩みの方はもう予防内服を始められたでしょうか? 症状が出現する前に抗アレルギー剤を服用し、症状が出にくくする事が花粉症対策の重要なポイントです。

 今回のテーマは同じ鼻水でも花粉症の鼻水ではなく乳幼児にしばしば認められる鼻水についてのお話です。 乳幼児、特に1歳前後の子供さんをお持ちの御両親で持続する鼻水に困っておられる方は少なくないと思います。 この年代の鼻水はウイルス感染等による風邪症候群に伴う急性鼻炎によって引き起こされることが多く、寒く空気の乾燥した冬季に増加します。 アトピー体質を持っている乳児や呼吸器感染症を繰り返す乳児の場合は特に治りにくい事が多いようです。
2歳以降になるとアレルギー性鼻炎の症状を現す子どもさんが増えてきます。 体質的な問題が基礎にあるのでいくら治療しても良くならない場合が多く、抗アレルギー剤の長期服用が必要になる事もしばしばです。

 最初透明であった鼻水が黄色くなってきた場合(これを膿性鼻漏と呼びます)は細菌感染を合併している事を示します。 放置すると気管支炎や肺炎を併発する事もありますので適切な治療が必要です。 この膿性鼻漏の原因菌は肺炎球菌(当院での検出率48.5%)、インフルエンザ菌(当院での検出率37.9%)、ブドウ球菌(当院での検出率13.6%)等で、これらの細菌に対し効果のある抗生物質を適切に使用する必要があります。

 しかし、最近では抗生物質に対して抵抗力を持った菌(耐性菌と呼びます)が増加しています。 代表的な抗生物質であるクラリスロマイシンに対しては55%と当院で検出された半数以上の菌が耐性を示しました。 またセフェム系の抗生物質に対しても薬による差はありますが4〜38%の菌が耐性を示しました。 このように耐性菌が増加した原因には医者による安易な抗生物質の処方がある事は間違いありませんが、抗生物質の飲ませ方に問題がある場合も少なからず見受けられます。 「鼻水が止まったので薬を止めました」というお話をよく耳にするのですが、中途半端に抗生物質を服用させる事は耐性菌を作る原因となるのです。 処方された抗生物質は指示された通り飲ませていただき完全に膿性鼻漏が止まるまで経過を見させていただきたいと思います。

 また薬だけに頼るのではなく頻回に鼻内を清掃し、鼻汁により鼻呼吸が出来ない時間を出来るだけ少なくすることも重要です。 口呼吸を放置すると急性中耳炎や滲出性中耳炎が高率に起こってきます。 根気よく鼻内清掃を続ける事、適切な薬を適切な期間服用させる事が治療のポイントです。