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院長通信

2011年7月

セカンドオピニオン

 私が医師として働き始めた昭和50年代の日本の医療現場ではインフォームドコンセントとかセカンドオピニオンといった概念は殆ど無く、悪性腫瘍が発見されても患者様本人には内緒にして患者様の家族に伝えるという事さえ普通に行われていました。
患者様に「あなたの病気は悪性腫瘍です」と告げて家族の方から非常識な医者だと抗議を受けた事さえありました。
そんな私にとって昭和62年にアメリカの大学病院に勤務した時に医師が患者さんに「あなたの病気は癌ですがこの事を家族に伝えますか秘密にしますか?」と質問しているのを経験した事は大きな衝撃でした。
私に「患者様の個人情報は患者様本人の物であり、患者様の許可なしには家族にさえ伝えてはならない」という事を教えてくれた貴重な体験でした。
日本でも近年個人情報保護が声高に叫ばれていますが、まだ一般の方々の意識に完全に浸透しているとは言えないようです。
同じように当時アメリカでは一般的に行われていた「セカンドオピニオンを求める」という行為も私にとっては新鮮な経験でした。近年日本でもセカンドオピニオンという言葉が普通に使われるようになってきましたが、今回はこのセカンドオピニオンについてお話したいと思います。

 セカンドオピニオンとは主治医を変えるという事ではなく、主治医との関係を保ちながら複数の医師の意見を聞くという事です。

 医療が飛躍的に進歩してきた近年、病気に対する検査、診断、治療の分野でさまざまな方法が行われるようになりました。その結果、医師によって患者様の病気に対する考え方が異なるといった状況も生じてきたのです。
極端に言えば患者様の病気に対し十人の医師が診察すれば十通りの診断が下される可能性もありますし、現在患者様が受けておられる医療よりもっと患者様に適した医療が存在する可能性もあるのです。
そこで必要になってくるのが複数の医師の意見を聞くセカンドオピニオンなのです。

 セカンドオピニオンを求める正式な手続きとしては、主治医に他医への診療情報提供書作成を依頼し、その診療情報提供書を持って他の医療機関を受診し、これまでの治療経過を検証してもらう事となります。
本来のセカンドオピニオンは「診療」ではなく「相談」になるため健康保険給付の対象にならず自費診療扱いとなりますが、患者様が保険証を提示して保険診療を希望されれば保険診療の扱いとなります。

 医師の診断に納得がゆかず複数の医療機関を次々と受診され、同じような検査を繰り返して受けておられる患者様も時々お見受けしますが、これは時間と費用の無駄となります。
診療情報提供書を介して複数の医師の間で患者様の病気を検討し、患者様にとって最善の治療法を見出す事がセカンドオピニオンの利用法と考えます。

 セカンドオピニオンは患者様にとって「より良い医療を受けられる」というメリットがあるのみならず、医師にとっても「誤診を回避する」等のメリットがある優れた仕組みなのです。
セカンドオピニオンを積極的に活用していただきたいと思います。