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院長通信

2012年5月

中耳炎

 小さなお子様をお持ちの方は何度か中耳炎という言葉を聞かれた事があると思います。
専門的に言いますと、この中耳炎にも真珠腫性中耳炎、慢性中耳炎、急性中耳炎、滲出性中耳炎などいくつかの種類に分類され、それぞれの病気に合った治療が必要となります。
今回はこの中耳炎について少し詳しく説明したいと思います。

 真珠腫性中耳炎は鼓膜の一部がポケットの用に中耳に入り込み、ポケットの中に剥離した上皮の角化物がたまってゆく病気です。このたまった上皮の角化物が真珠のような外観を示すことから真珠腫と名付けられました。
名前はきれいなのですが、中耳炎の中で最もたちの悪い病気で、進行すると骨を壊してどんどん大きくなり、放置していると脳膿瘍や顔面神経麻痺といった様々な合併症を引き起こします。
耳だれや難聴で発見されることが多いのですが大きくなるまで症状を出さない場合もありますので注意が必要です。
病気の進行が遅い場合はしばらく様子を見る事も可能ですが、根本的には手術を行って真珠腫を摘出する必要があります。

 慢性中耳炎は急性中耳炎を繰り返しているうちに鼓膜に出来た穴(鼓膜穿孔)が閉じなくなった病気です。
中耳が常に外界と接しているため感染を起こしやすくしばしば耳だれを繰り返します。この中耳炎の難聴は初期には伝音性難聴で手術を行って鼓膜穿孔を閉鎖すれば難聴が改善されますが、放置していると感音性難聴が出現し、鼓膜穿孔を閉鎖しても聴力が回復しなくなりますので早期の手術が望ましい病気です。

 急性中耳炎は咽頭から耳管という管を通って細菌が耳に入り炎症をおこす病気で強い耳痛が生ずるのが特徴です(耳に水が入ったから起こるのではありません)。
風邪や咽頭炎が先行する事が多くしばしば高熱も伴います。小さなお子さんが夜間に耳を痛がって泣き出した場合はたいていこの病気です。鼓膜が破れて耳だれが出てくると痛みが治まりますが、痛みを改善するために鼓膜を切開して膿を出すことが必要になる場合もあります。 抗生物質の内服が有効で、大多数の急性中耳炎は1週間前後で軽快しますが、完全に治しておかないと滲出性中耳炎に移行する場合がありますので注意が必要です。

 滲出性中耳炎は子供さんに良く見られる病気の一つです。
この病気は耳の中に滲出液と呼ばれる液がたまる病気で、痛みがありませんので気付かれにくい病気です。聞き返しが多い、テレビを近くで見るなどの症状で受診され発見される場合が多く、前述したように急性中耳炎から移行する場合も少なくありません。咽頭扁桃(アデノイド)が肥大している場合が多く、大きないびきをかいたり何時も口をあけている子供はこの病気にかかっている事がしばしばあります。放置すると鼓膜が動かなくなる癒着性中耳炎という病気に進み、手術を行わないと聴力が回復しなくなる場合もありますので注意が必要です。この病気は大多数が小学校の高学年になると自然に治癒してゆきますが、それまでは厳重な経過観察と適切な治療が必要です。