兵庫県西宮市甲子園口 耳鼻咽喉科 レーザー手術 甲状腺腫瘍 花粉症 アレルギー

院長通信

2013年3月

治りにくい病気

 私ども耳鼻科医は日々様々な病気の患者様を診察させていただいております。これらの病気には比較的短期間で治る病気、治ってはまた症状が出る病気、長期間に渡る治療を余儀なくされる病気、治すことができない病気などそれぞれの病気が持つ性質があります。病気と向き合っていく上でかかった病気の性質を知っておく必要があると思いますので、今回は医者から見た病気の性質について述べさせていただきます。

 最も治療が困難な病気は神経の変化による病気で。神経性難聴、嗅覚障害などです。
加齢による老人性難聴は現代の医学では全くお手上げで、この老人性難聴に伴う耳鳴りも多くの場合消し去ることが出来ません。急に発症した神経性難聴は発症2週以内のごく初期に治療を行った場合は治る事がありますが、それ以上経ってから治療を行っても先ず回復しません。
匂いが判らなくなる嗅覚障害も発症後数カ月以内なら回復する事が多いのですが、半年以上経っている場合は治療を行ってもほとんど回復いたしません。

 アレルギー性鼻炎(花粉症)も根本的な体質からは治すことが出来ない病気です。
原因になる抗原を遠ざける、薬や手術でアレルギー反応を出にくくするなどの対症療法で症状の緩和を図る事になります。当院で行っているレーザー手術もこの対症療法の一つで、アレルギー体質を治療する事は出来ませんが、かなり高率にアレルギー症状を抑えることができます。
同じ鼻の病気である副鼻腔炎(蓄膿症)は完全に治すことが可能な病気です。
良く患者様から「蓄膿症は治らない病気ではありませんか?」という質問を受けます。確かに副鼻腔炎は炎症の場が薬が到達しにくい鼻の深部にあり、治療に時間のかかる病気ではありますが、根気よく治療を続ければ治すことが可能な病気です。少し症状が軽くなれば放置するといった中途半端な治療を続けると、完全に治っていなかった副鼻腔炎が再燃します。このような症状の改善、増悪をくりかえしていると病気が慢性化してしまいます。

 滲出性中耳炎も治療に根気が必要な病気です。
小児の25%が一度はこの病気にかかると言われています。その中の数%の子供は持続的にこの病気を繰り返します。放置すると鼓膜が動かなくなり難聴が進行します。小学校の高学年になると殆ど見られなくなる病気ですので、成長して自然治癒となるまでは鼓膜の可動性(聴こえの状態)に注意を払う必要があります。

 治りにくい病気と思われている病気の一つに悪性腫瘍(癌)があります。
以前は不治の病と言われてきた時代もありました。確かに今でも死因の多くを占め、日々のニュースでこの病気で亡くなる有名人を耳にします。しかし最近の悪性腫瘍に対する治療法の進歩は目覚ましく、早期に発見できればかなり高率に病気から逃れる事が出来るようになっています。体調不良を感じた時は躊躇せずに専門医の診察を受けて下さい。

 以上は耳鼻科領域で良く見られるいくつかの病気の性質です。これらの知識を日々の治療に役立てていただければと存じます。