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院長通信

2014年7月

滲出性中耳炎について

 毎年春から初夏にかけて保育所や幼稚園で耳鼻咽喉科の集団検診が行われます。 私も数か所の施設を担当しているのですが、この検診の時にしばしば見かける病気に滲出性中耳炎という病気があります。この滲出性中耳炎は小児によくみられる耳鼻咽喉科疾患で(25%の小児がこの病気にかかるという報告もあります)、これまでの院長通信でも取り上げた事があるのですが、なかなか治りにくい病気で、また一旦治ってもすぐに再発するため、当院を受診されている子供さんの保護者の方々からも度々この病気についての質問を受けます。そこであらためて滲出性中耳炎について説明させていただきたいと思います。

 滲出性中耳炎は鼓膜の内側に中耳腔の粘膜から滲みだした液体が貯留する病気で、痛みを訴えることはありませんのでご両親には気付かれにくい病気です。耳をよく触る、何か耳を気にしている、呼びかけに反応しない、テレビを近くで見るなどの症状から耳の病気を疑われ、耳鼻咽喉科を受診し発見されることが多い病気です。口をいつもあけている、いつも黄色い鼻水を垂らしている、いびきが大きいなどの症状がある場合はこの病気にかかっている可能性があります。また周囲に全く気付かれず検診で指摘され、初めて病気にかかっている事が明らかになる事も少なくありません。 

 大多数の滲出性中耳炎は適切な治療と管理を行えば成長とともに自然に治ってゆきますが、気がつかずに放置すれば癒着性中耳炎という状態まで進行し、手術を行わなければ改善しない伝音性難聴を残す場合もあります。

 治療は鼻を清潔に保つ事が一番大切で、常に鼻を健康な状態に保っておけば滲出性中耳炎は自然に治ってゆきます。一旦滲出性中耳炎にかかった場合は鼓膜の状態を定期的に観察し、耳管通気と呼ばれる耳管から中耳腔に空気を送る治療を鼻、のどの治療とともに行います。滲出液がねばくなり鼓膜の可動性が悪化した場合は鼓膜を切開して滲出液を除去し、鼓膜の可動性を回復させる必要があります。当院の患者様でも1歳から2歳の間に7回も鼓膜切開を受けられた子供さんがおられました。しかしその子供さんも成長とともにこの病気から解放され、3歳以降は一度も再発していません。このように適切な対応さえ取っておけば後遺症を残す病気ではないのですが、重症の滲出性中耳炎に対してはアデノイド切除術や口蓋扁桃摘出術を行って耳管の機能を回復させることが必要になる場合もあります。また頻回に鼓膜切開を行う代わりに鼓膜にドレーンチューブを留置し、このチューブに耳管の役割をさせることによって滲出液の貯留を防ぐ方法もあります。

 滲出性中耳炎という病気は一旦発症するとなかなか完治しにくく患者様やご家族にとってストレスのたまる病気です。しかし滲出性中耳炎は耳管機能が確立される小学生高学年になると自然に治ってしまいます。それまでは気長に症状に応じた治療を行っていただきたいと思います。