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院長通信

2014年9月

病識

 皆様は「病識」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。一般的には「あの人は病識がない」というような使い方をされることが多いのですが、「病識」とは自分が病的状態にある(病気である)と認識することを意味する言葉です
私たちは人間や動物の心や体に不調または不都合が生じた状態のことを一般的に(病気)と呼んでいます。(病気)の定義にもいろいろな考え方がありますが、今回それについては深入りをせず、自分が病気であると自覚する「病識」についてお話させていただきます。なぜなら私たち医師の究極の目標は「病識」を持って病院を訪れた患者様から「病識」を取り除くことだからです。

 大多数の患者様では患者様がお持ちの「病識」と医師の見立てた患者様の病的状態が一致し、治療によって「病識」を取り除くことができます。しかし中には実際の病的状態と「病識」の間にずれが生じている患者様もおられます。

 御自分が病的状態でないにもかかわらず病的状態だと思い込む(病識が解消されない)患者様や、病的状態が存在するにもかかわらず病的状態ではない(病気ではない)と判断される患者様たちです。
前者の代表的な例は悪性病変がないにもかかわらず自分が癌ではないかと心配される"ガンノイローゼ"の患者様です。また頑固なめまいやふらつきを訴えられるにもかかわらず内耳や脳に異常が認められない患者様もしばしば見受けられます。しかしこのように「病識」が持続する方は体の不調は解消されないものの医師の診察を受けに来てくださるので医師の立場からすると安心して経過を見られる患者様です。
問題なのは病気があるにもかかわらず自分は大丈夫と思い込む(いわゆる病識のない)後者の患者様です。体の異常を軽く考えたために病気の発見が遅れ、結果として不幸な結末を迎えられた患者様を少なからず見てまいりました。小さな異常でも重大な病気発見の糸口となることはしばしば経験されることです。「病識」に気を配ることは病気の早期発見につながります。少しでも体に不安を感じられた場合はこれを無視せず病的状態の有無を確認されることをお勧めします。