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院長通信

2016年1月

咳について

 冬になって気温が下がり空気が乾燥してくると咳を訴える患者様がたくさん受診されます。
一口に咳といってもその原因は様々で、咳を止めるためには原因を正確に診断し適切な対応策を取る必要があります。 今回は咳について述べさせていただきます。

 咳は肺や気管などの呼吸器を守るために、外から入ってきたほこり、煙、水分などの異物や気道から分泌された粘液が病原体や異物をからめ取って生じた痰などを気道から取り除こうとする生体防御反応です。 咽頭や気管、気管支など気道の粘膜表面にあるセンサー(咳受容体)が異物や痰の存在を検知するとその情報が脳にある咳中枢に伝えられ、横隔膜や肋間膜などの呼吸筋(呼吸をおこなう筋肉)に指令が送られます。 この呼吸筋の収縮により咳が起こり異物や痰を気道から排出しようとします。 この一連の反射運動を「咳反射」といいます。

 つまり咳が出る原因としては、
@気道に入り込む異物が存在する場合、
A気道自体に炎症があり痰の量が増加したり咳受容体が過敏になったりした場合、
B咳反射の経路に問題があり誤った指令が発せられる場合などがあるのです。
@の例としては汚れた空気を吸い込んだ場合や副鼻腔炎などで鼻汁が気道に流れ落ちる場合(後鼻漏と呼びます)があげられます。
またAの例としては細菌感染やウイルス感染による咽喉頭炎、肺炎、気管支炎などの気道の炎症および気管支喘息などの気道のアレルギーなどがあげられます。
Bの例としては頸部腫瘍などが咳反射に関係する神経を巻き込み情報伝達が障害される場合や薬の副作用で刺激物質が増加し咳反射を活性化させる場合などがあげられます。

 多くの場合単一の原因ではなく複数の原因が関係していますので正確に咳の原因を突き止めて適切に対処しなければいけないのです。
よく「咳止めの薬をください」と言われる患者様がおられます。 一般的に咳止めと呼ばれる薬は咳中枢に作用して咳反射を抑制する薬ですので異物が原因の咳の患者様にとっては咳止めの薬がかえって生体防御反応を抑制して病状を悪化させる場合があることを知っていただきたいと思います。
 長引く咳を訴えて受診された患者様を診察させていただいて副鼻腔炎による多量の後鼻漏を認めることは少なくありません。 このような場合に咳止めの薬は逆効果で、後鼻漏を減らす治療がすなわち咳を止める治療になるのです。

 乳幼児が夜間に強い咳を繰り返す場合は急性声門下喉頭炎という病気を疑う必要があります。 この病気は仮性クループとも呼ばれ早急に適切な手当てを行わなければ生命にかかわる場合さえあります。 子供が夜間に咳発作を起こした場合は直ちに専門医の診察を受けてください。

 長引く咳は肺癌や肺結核の初期症状の場合もありますので当院では胸部CT写真を撮影するよう勧めさせていただいております。

 一口に咳といってもその原因は様々です。 このことをご理解いただき適切な治療を受けていただきたいと思います。