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院長通信

2016年7月

おたふくかぜ

 今年は5年ぶりにおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)が流行しているようです。当院でも6月下旬より立て続けにおたふくかぜに罹った子供さんが受診されております。 そこで今月はおたふくかぜについて説明させていただきたいと思います。

 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)はムンプスウイルスによって引き起こされる唾液腺の炎症で両耳の下にある耳下腺というツバを出す腺がこのウイルスの感染によりはれあがり「おたふく」のような顔になるためこの名が付きました。
腫れるのは耳下腺が主ですがあごの下にある顎下腺が腫れることもあります。また片側だけが腫れることもあれば両側とも腫れる場合もあります。 好発年齢は5〜10歳で、子供に多い病気です。咳、くしゃみ等による飛沫感染や、唾液を介した接触感染で伝染し、感染力が強い伝染病です。 このウイルスに感染すると2〜3週間の潜伏期間ののちに唾液腺腫脹や発熱を生じます。 ただしウイルスに感染しても症状の出ない場合(不顕性感染と呼ばれます)も約30%あると報告されていますので、唾液腺が腫れていないからおたふくかぜではないと安心はできません。 おたふくかぜの診断は血液の中にムンプスウイルス抗体を検出できれば確定します。 あとで述べますがこのおたふくかぜには様々な厄介な合併症がありますので流行時には他の症状の有無にも注意を払う必要があります。 一度かかると再発しないといわれておりますが、希に再発される方もおられますので全く安心というわけではありません。

 ウイルス感染ですのでこの病気に有効な薬はありません。水分を十分摂って体力の温存を図るのが一番です。 高熱に対しては解熱剤を用いる場合もありますが、病気を長引かせる場合もありますので必要最小限の使用が望まれます。 ふつう4〜6日程度で唾液腺の腫れは消失します。唾液腺が腫れている間は他の人に病気をうつす可能性がありますので登園、登校は控えなければなりません。

 おたふくかぜの合併症としては無菌性髄膜炎、精巣炎および卵巣炎、膵臓炎、感音性難聴などが上げられます。 頭痛、嘔吐、けいれんなどの症状が現れた時には無菌性髄膜炎を疑い検査を行う必要がありますが、この合併症は比較的予後良好です。 思春期以降におたふくかぜに罹った場合には精巣炎や卵巣炎を併発し不妊症となることもあります。腹痛や下痢がある場合は膵臓炎の合併が疑われます。 また耳鼻科領域で最も重篤な合併症はムンプス難聴と呼ばれる感音性難聴で、一度この合併症が出現しますと聴力を完全に失うことになります(両側の難聴をきたすことは非常にまれです)。 これらの合併症は唾液腺が腫れていないときに出現することもありますので流行時には十分に注意を払ってください。

 現在最も有効と考えられている予防法はワクチン接種です。現在おたふく風邪の予防接種は任意接種で有料となっております。 全く副作用のないワクチンではありませんし、ワクチンを接種したからおたふくかぜにかかる可能性がゼロになるわけでもありません。 しかし重篤な合併症を起こしてしまっては取り返しがつきませんので合併症の危険性を減らすためにもワクチン接種をお勧めいたします。