兵庫県西宮市甲子園口 耳鼻咽喉科 レーザー手術 甲状腺腫瘍 花粉症 アレルギー

院長通信

2016年12月

乳幼児の鼻漏(びろう)

 関東地方では11月下旬に寒波が到来し、東京でも積雪が観測されました。この寒波は幸いにも関西地方を迂回してくれましたがそれでも日ごとに寒さが増しているのを体感されていることと思います。 寒く空気の乾燥した冬季に増加するのが鼻漏(びろう)を垂らした乳幼児の患者様です。これは抵抗力、適応力が十分でない乳幼児が寒冷や乾燥といった気象条件の影響を最も受けやすいためです。

 鼻漏(びろう)とは鼻みず、鼻汁(びじゅう)のことで、鼻の粘膜にある分泌腺と杯細胞(はいさいぼう)から出た分泌液と、鼻の血管からにじみ出た血漿(けっしょう)成分の合わさったものです。鼻の粘膜からの分泌液は本来病的なものでなく、適切な量の分泌物は鼻に入ったゴミを取り除く線毛運動という仕組みに不可欠なものです。しかし寒冷刺激、ウイルス感染、抗原刺激などにより分泌物や血漿成分が過剰に産生されると鼻漏が増加し、鼻づまりや呼吸困難といった症状が出現するのです。透明な鼻漏が増加した状態は、一般的に急性鼻炎やアレルギー性鼻炎と呼ばれるのですが、この時点で適切な治療を行わずに放置していると、細菌感染を合併して黄色い鼻漏を出す副鼻腔炎の状態になります。

 副鼻腔炎は急性中耳炎や滲出性中耳炎などの耳の病気、急性咽喉頭炎や急性声門下喉頭炎(仮性クループとも呼ばれます)などの上気道感染症および気管支炎、肺炎などの下気道感染症を続発させる事もしばしばで、治療が適切に行わなければ病気の連鎖を起こしてしまいます。

 鼻の粘膜には鼻漏をのどの奥に送る働きがありますので、鼻漏が増加してくると鼻がのどに流れる状態(後鼻漏と呼びます)も出現します。この後鼻漏は咳の原因になる事がしばしばで、咳がひどいと受診された患者様の咳の原因が実は鼻の病気であったという例も少なくありません。喉(のど)の炎症が原因の咳に対しては咳止め薬は有用ですが、後鼻漏が原因の咳に対して咳止めの薬を服用することは体の防衛能力を低下させて下気道感染症を引き起こす場合がありますので避けていただきたいと思います。

 乳幼児の鼻漏は万病の始まりです。ことに黄色い鼻漏を認めたらすぐに耳鼻咽喉科を受診させていただきたいと存じます。乳幼児の鼻漏はなかなか止まりにくく長期間の通院が必要となる場合も少なくありませんが、根気よく治療を受けさせていただきたいと存じます。