兵庫県西宮市甲子園口 耳鼻咽喉科 レーザー手術 甲状腺腫瘍 花粉症 アレルギー

院長通信

2017年5月

子供の中耳炎

 小さなお子様をお持ちの方は中耳炎という病名をお聞きになった事があると思います。今回は子供にみられる代表的な中耳炎である急性中耳炎滲出性中耳炎について述べさせていただきます。

 子供が急に耳が痛いと訴えた場合、急性中耳炎である可能性はかなり高率です。 急性中耳炎のほとんどは、咽頭(のど)と中耳(鼓膜の内側)をつないでいる耳管という管を通ってのどから中耳に細菌が入ることにより中耳に炎症が生じたものです(外から耳に水が入ったから起こるのではありません)。 強い耳痛を訴え、高熱を伴うのが特徴です。 風邪や咽頭炎が先行する事が多いため、経験を積んだお母さま方は子供さんの鼻がズルズル出だすと急性中耳炎にならないよう早めに受診して鼻の治療を行ってくださいます。 痛みは中耳にたまった膿が鼓膜を圧迫することによって生じますので、鼓膜が破れて中耳の膿が出てしまうと痛みが治まります。 炎症が軽い場合は抗生物質の内服で治りますが、炎症が高度で痛みが続く場合には鼓膜を切開して中耳にたまっている膿を出すことが必要になる場合もあります。 大多数の急性中耳炎は1週間前後で軽快しますが、完全に治しておかないと次に述べます滲出性中耳炎に移行する場合がありますので注意が必要です。

 滲出性中耳炎は子供に多く見られる病気で、四人に一人はこの病気を経験するといわれるほどです。 この病気は先ほど述べました耳管という管が十分に機能を果たせない場合に生じます。 耳管は中耳(鼓膜の内側)の気圧を外気(鼓膜の外側)と同じに保つため空気の出し入れを行う役割を担っており、私たちが山に上ったり下りたりするときに行う耳抜きはこの耳管を介して中耳の空気圧を調整する行為です。 子供の耳管機能は大人に比べると不十分なため中耳の空気圧が外気に対し低くなることが多く、この低い空気圧のため中耳の粘膜から浸出液と呼ばれる液体が滲みだしてきます。 このように中耳(鼓膜の内側)に浸出液がたまると聴こえが悪くなりますので、聞き返しが多い、テレビを近くで見るなどの症状が出現してくるのです。

 またいびきをかく、何時も口をあけているといった子供たちは耳管機能が障害されている可能性が高く、滲出性中耳炎の有無をチェックする必要があります。

 滲出性中耳炎を放置すると浸出液が徐々に粘っこくなり、聴こえが悪化します。 最悪の場合鼓膜が動かなくなる癒着性中耳炎という病気に進みます。 癒着性中耳炎になると聴力を回復するために手術が必要となりますのでここまで進む前に滲出性中耳炎の段階で治療する必要があります。

 滲出性中耳炎の大多数は患児が小学校の高学年になると自然に治癒してゆきますが、それまでは厳重な経過観察と適切な治療が必要です。