兵庫県西宮市甲子園口 耳鼻咽喉科 レーザー手術 甲状腺腫瘍 花粉症 アレルギー

院長通信

2018年3月

溶連菌感染症

 皆さんは溶連菌感染症という病名をお聞きになったことがありますか?
発熱を伴いのどの痛みをきたす病気の代表的なものは急性咽喉頭炎や急性扁桃腺炎ですが、これらの病気はウイルスや細菌によって引き起こされます。
ウイルスによって引き起こされる病気は一般的に風邪症候群と呼ばれ咽頭痛の他に鼻水や咳などの症状を伴うことがしばしばです。
一方、細菌が原因となる咽喉頭炎や扁桃腺炎は強い咽頭痛が生ずることが多くしばしば嚥下障害も伴います。 溶連菌はこの細菌性咽喉頭炎、扁桃腺炎を引き起こす細菌の一つで、正式には溶血性連鎖球菌と呼ばれます。 溶連菌には様々なタイプがありますが溶連菌感染症の90%以上を占めるA群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)による感染症が溶連菌感染症として理解されているといってもよいでしょう。 溶連菌は咽喉頭炎、扁桃腺炎を引き起こす細菌の中ではさほど高頻度にみられるものではありません(頻度が高いのは肺炎球菌やインフルエンザ菌です)。 抗生物質が使用される以前には猩紅熱と呼ばれて法定伝染病にも指定されていた溶連菌感染症ですが、現在は適切な治療で完治させることができるようになり指定も解除されています。 しかし頻度の低い溶連菌が大きく取り上げられるのはまれではありますが重篤な合併症を引き起こすことがあるからです。 溶連菌感染によって引き起こされるリウマチ熱や急性糸球体腎炎は後遺障害を残すこともしばしばで、最悪のケースでは劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症や毒素性ショック症候群を発症して死に至ることもあるのです。 これを読むと溶連菌はなんと恐ろしい細菌なのだと恐れる方がいるかもしれません。 しかし溶連菌はかなりの方ののどに常在菌として住み着いているのです。 きっちりと診断し対応すれば怖い病気ではありません。

 診断法としては咽頭ぬぐい液からの培養が確実ですが、最近では約十五分で判定できるキットも利用されています。 またASOと呼ばれる血液中の抗体価を調べることで感染の危険度を判定することもできます。 当院では発熱を伴った咽頭痛の患者様に対して積極的に血液検査を行い白血球数とその分画からウイルス感染か細菌感染かを診断し抗生物質を適切に使用することによって溶連菌感染に対応しております。

 年に4回以上扁桃腺が炎症を起こして高い熱が出るような場合、また扁桃腺の炎症が腎臓、関節、皮膚等の他臓器に障害を引き起こす場合は扁桃腺を摘出する事も考慮する必要があると考えられます。 扁桃腺の病気に関して悩んでおられる方は一度専門家(耳鼻咽喉科医)の助言を聞いた上で適切な判断を下していただきたいと思います。