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院長通信

2018年6月

航空性中耳炎

 皆様は航空性中耳炎という病名をお聞きになったことがありますか?
これは飛行機に乗った後に強い耳痛、耳閉感、難聴が出現する病気で、当院でもしばしば患者様から相談を受ける病気です。 これから夏休みになると飛行機に搭乗する機会も増えると思われますので、今回は航空性中耳炎について説明させていただきたいと思います。

 航空性中耳炎は耳管狭窄症と呼ばれる病気の一種です。子供によくみられる滲出性中耳炎も航空性中耳炎と同様に耳管狭窄によっておこる病気です。

 耳管とは鼓膜の内側にある中耳腔という空間とのどとの間を繋いでいる管で、私たちはこの管を通して空気を出し入れし、鼓膜の内側と外側の気圧が等しくなるように調節しているのです。 高い山へ登ったり、高層ビルでエレベーターに乗ったりしたときに耳が塞がったような感じが生ずることは皆様も経験されていると思います。 大気圧は高いところに行くほど低くなりますが、中耳腔は普段は閉鎖された空間なので外気圧が変化してもすぐに圧を合わせることができません。 この時私たちはあくびをしたり唾を飲み込んだりして強制的に耳管を開いて中耳腔の気圧を外気圧と同等にして耳閉感を消失させているのです。 この気圧の変化が最も顕著に表れるのが飛行機に搭乗した時です。

 飛行機は高度約一万メートルという高いところを飛びますが、この高度での気圧は0.2気圧と地上の五分の一しかありません。 そこで飛行機では機内に空気を送って(与圧といいます)0.8気圧程度を保っているのです。 飛行機は急激に上昇することはできませんので離陸後巡航高度に達するまで時間をかけて徐々に機内の気圧を下げてゆきます。 一方高度を下げることは簡単にできますので着陸時には十分程度で機内の気圧が急上昇します。 航空性中耳炎が離陸時より着陸時に生じやすいのはこのためです。

 ではどのようにすればこの不快な病気から逃れることができるのでしょうか?
先に述べましたようにこの病気のポイントは耳管の機能にあります。耳管が詰まりやすい状態、すなわち風邪や鼻炎などをきっちりと治しておくことが必要です。 飛行機が上昇している時、降下している時は飴をなめたりガムをかんだりしてできるだけ耳管を開きやすくする努力を行いましょう。 また離着陸の1時間ほど前に咽頭粘膜の腫れを軽減させる薬を服用したり点鼻したりするのも症状の出現を防止する効果があります。

 飛行機に乗った後に不愉快な耳症状で悩まれたことのある方はご相談ください。