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院長通信

2018年7月

水泳と滲出性中耳炎

 先月に引き続き耳管にまつわる話になりますが、今月は小児によくみられる耳鼻咽喉科疾患の滲出性中耳炎についてお話させていただきます。 この病気については以前にも何度か説明させていただいたことがあるのですが、最近この病気を患っている子供さんのご両親から水泳の可否についての質問をしばしば受けましたので院長の私見を述べさせていただきたいと思います。

 滲出性中耳炎は中耳腔と呼ばれる鼓膜の内側のスペースに中耳の粘膜から滲みだした透明な液体が溜まる病気で、痛みを訴えることはまずありません。 呼びかけに反応しない、テレビを近くで見るなどから聴こえが悪いのではと疑われて耳鼻咽喉科を受診される場合はたいていこの病気が見つかります。 また鼻づまりやいびきといった耳以外の症状で耳鼻咽喉科を受診された際に発見されることもしばしばです。 幼児期に25%の子供が一度はこの滲出性中耳炎を経験するといわれているほど一般的な病気ですが、患児が症状を訴えることがまれなため周囲に気づかれず放置されている例もしばしば見られます。

 この病気は中耳腔と咽頭腔との間をつなぎ換気を行っている耳管というパイプが鼻炎やアデノイド増殖症の影響で役目を果たせなくなると発症しますので、口をいつもあけている、いつも黄色い鼻水を垂らしている、いびきが大きいなどの症状があればこの病気を疑う必要があります。 滲出性中耳炎を放置すれば癒着性中耳炎という状態まで進行し、手術を行わなければ改善しない伝音性難聴を残す場合もあります。 なかなか治りにくくまた一旦治ってもすぐに再発するために、お母様方から「いつまで通院しなければならないのですか?」「まだ良くなりませんか?」としばしば質問を受ける病気です。 そこで当院ではこまめに鼓膜所見を供覧し、病気の程度を確認していただくように努めております。

 滲出性中耳炎は急性中耳炎や慢性中耳炎と違って鼓膜自体に損傷はありませんので水泳等で耳に水が入っても何ら問題はありません(但し治療目的で鼓膜にチューブを留置されている場合は水泳不可です)。 滲出性中耳炎にかかっていても安心してプールに通わせてください。 ただし私ども耳鼻科医の世界ではスイミングスクールに通っている子供には滲出性中耳炎にかかる子供が多いということも共通認識として存在します。 これはプールの水に含まれる消毒薬の影響で鼻炎を起こす子供が多いからだと考えられています。 スイミングスクールから帰ってきた子供さんがいつも鼻水を垂らしているような場合には念のため耳鼻咽喉科を受診して鼓膜所見をチェックしてもらうことをお勧めします。

 滲出性中耳炎という病気は一旦発症するとなかなか完治しにくく患者様やご家族にとってストレスのたまる病気です。 しかし滲出性中耳炎は耳管機能が確立される小学生高学年になると自然に治ってしまいます。 それまでは気長に症状に応じた治療を行っていただきたいと思います。