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院長通信

2018年9月

のどの違和感

 皆様の中には「のどに何か出来物がある感じがする」、「飲み込んだ時に引っかかる感じがする」「いつものどに痰が絡んでいる」などの症状で悩んでおられる方はおられませんか? このような症状は咽頭違和感と呼ばれますが、当院でもほぼ毎日咽頭違和感を訴える患者様が受診されます。 この症状を訴えられる患者様の多くは咽頭や喉頭に悪性腫瘍(いわゆるガン)ができたのではないかと心配されて受診されます。 しかしのどの悪性腫瘍はそれほど頻度の高い病気ではなく、私どもの診療所では年に数人見つかる程度です。 頻度は低い病気ですが見逃すと生死にかかわる場合が多いので私どもが最も神経を使って診察を行う病気です。

 咽頭違和感を引き起こす病気の中で最も頻度の高いのがのどの炎症です。 咽喉頭炎や扁桃炎などのどに生ずる炎症性疾患は耳鼻咽喉科領域で最もよくみられる疾患の一つで、主な症状は咽頭痛ですが咽頭違和感を合併することもしばしばです。 のどの炎症性疾患は集中的に薬物療法と局所療法を行うことにより短時間で症状を改善させることができます。

 のどの炎症の次に咽頭違和感を引き起こすのは副鼻腔炎(いわゆるちくのう症)などの鼻の炎症です。 なぜ鼻の病気で咽頭違和感が起こるのかと疑問を持たれる方もおられると思いますが、副鼻腔炎による後鼻漏(黄鼻がのどに流れる症状)が咽頭違和感を引き起こすことは稀ではなく、「のどの症状で受診したのに鼻の病気が原因と指摘され鼻の治療も行った」という経験を持たれる方も多くおられます。 アレルギー性鼻炎や鼻中隔湾曲症が原因で生じた鼻閉(はなづまり)による口呼吸が咽頭違和感の原因であることもしばしば見受けられます。 鼻の治療を行うことによって咽頭違和感が消失する事も多いのですが、症状の改善には少し時間がかかります。

 胃や食道の異常から咽頭違和感が生ずることもあります。強い酸性の胃液が食道内に漏れて発症する逆流性食道炎という病気は高率に咽頭違和感を引き起こします。 内視鏡検査で梨状陥凹とよばれる食道入口部の咽頭粘膜にびらんが認められた場合はこの病気を疑い胃酸分泌を抑える薬で治療を行います。

 喉頭の変形や舌扁桃肥大などののどの形態異常が原因で生ずる咽頭違和感もあります。 うがいや局所治療で対処しますがなかなか症状が改善しない場合もあり、根治するためには手術が必要になる場合もあります。

 中年女性の咽頭違和感の原因としてしばしばみられるのが更年期障害です。 めまい、のぼせ、動悸などの症状と一緒に咽頭違和感が出現する事もしばしば見受けられます。 この場合症状が長期間持続することが多く、精神安定剤などの服用が必要になる場合もあります。 重症例では婦人科でホルモン療法を受けていただく場合もあります。

 咽頭違和感はなかなか治りにくい症状で複数の病院を次々と受診される患者様も少なくありません。 病状を正しく理解して自分に合った治療法を選択していただきたいと思います。