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院長通信

2019年1月

鼻漏と鼻洗浄

 例年より暖かかった今年の冬も昨年末からの寒波で一気に気温が低下してまいりました。寒く空気の乾燥した冬季に増加するのが鼻漏(びろう)を訴える患者様です。 鼻漏は鼻みず、鼻汁とも呼ばれるもので、鼻の粘膜にある分泌腺と杯細胞(はいさいぼう)から出た分泌液と、鼻粘膜の血管からにじみ出た血漿(けっしょう)成分との合わさったものです。 適切な量の鼻漏は鼻に入ったゴミを取り除く線毛運動という仕組みに不可欠なもので、また鼻粘膜に適度な湿り気を与え乾燥を防ぐといった役割をもっています。

 しかし寒冷刺激、ウイルス感染、抗原刺激などにより鼻の粘膜から分泌物や血漿成分が過剰に産生されると鼻漏の量が増加し、鼻づまりや呼吸困難といった病的な症状が出現します。 この時増加する鼻漏は透明でさらさらしており漿液性、あるいは水様性鼻漏と呼ばれます。急性鼻炎やアレルギー性鼻炎で見られるのがこのタイプの鼻漏です。

 一方鼻粘膜に細菌感染がおこると色のついた(黄色や緑色の)鼻漏となり、膿性鼻漏と呼ばれます。副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)で見られるのがこのタイプの鼻漏です。

 副鼻腔炎は急性中耳炎や滲出性中耳炎などの耳の病気、急性咽喉頭炎などの上気道感染症および気管支炎、肺炎などの下気道感染症を続発させる事もしばしばで、治療が適切に行わなければ病気の連鎖を引き起こします。 副鼻腔炎では鼻がのどに流れる状態(後鼻漏と呼びます)が出現します。この後鼻漏は咳の原因になる事がしばしばで、咳を主訴に受診された患者様の咳の原因が実は副鼻腔炎であったという例も少なくありません。 後鼻漏が原因の咳は下気道を守るための生体の防御反応ですので後鼻漏が原因の咳に対して咳止めの薬を服用することは下気道感染症を引き起こす危険がありますので避けていただきたいと思います。

 この副鼻腔炎に対し有効な治療法の一つに鼻洗浄があります。鼻洗浄は生理食塩水で鼻腔内を洗浄する治療法で、当院では副鼻腔炎の患者様はもちろん、アレルギー性鼻炎、風邪症候群などで鼻詰まりや鼻水を来たした患者様に対しても鼻洗浄を行っております。 副鼻腔炎では膿性の色のついた鼻汁が、アレルギー性鼻炎や風邪症候群では水様性または粘液性の透明な鼻汁が鼻の中に溜まります。 これらの鼻汁をそのまま放置しますと鼻粘膜の機能が障害され症状がさらに悪化する事になります。鼻洗浄は鼻の中に溜まった病的な鼻汁を除去し鼻粘膜が本来持つ生理機能を回復させる治療法なのです。 また余分な鼻汁を除去することにより鼻詰まりも改善されます。鼻洗浄の有効性は欧米でも証明されており、副鼻腔炎の治療としては抗生剤服用と同等の効果があるとされています。 しかし鼻洗浄のみで副鼻腔炎を治すことはできません。規則正しい日常生活、バランスのとれた食事、鼻をかむ習慣をつける事等も大切なポイントです。 そして症状に応じた薬物治療やネブライザー治療等を鼻洗浄と併用する事により副鼻腔炎を治す事が出来るのです。副鼻腔炎は治りにくい病気の一つですが、治らない病気ではありません。 鼻洗浄を含む治療を根気よく続けていただきたいと思います。